
パワーアシストスーツが普及するにつれ、それに起因する事故やトラブルも増加していくでしょう。予想される事態を紹介します。
アシストスーツで予想される事故
使用中の突然停止
パワーアシストスーツを作業者が装着して作業を行っている最中にパワーアシストスーツが動作を突然停止することで、事故が起こる可能性があります。
大きな力でアシストを行うパワーアシストスーツが突然アシストを停止することで、作業者に突然大きな負荷が掛かり、バランスを崩して転倒する、荷物を落下させるなどの事故につながる恐れがあります。
バッテリーなどの発火
パワーアシストスーツの中にはモーター駆動により作業者をアシストするものがあります。
モーターやバッテリーからの発火などもリスクとして顕在化する可能性があるでしょう。
特にリチウムイオン電池は従来から発火・発煙などの事故が世界中で相次いでおり、例えばパワーアシストスーツの所有者が安いからと純正品でない粗悪な互換バッテリーに交換することで事故が発生するといった懸念もあります。
業務中の事故を83%減少させたというデータも
工業製品に故障や事故は付き物であり、そのリスクを適正に見積もることが重要です。一方、パワーアシストスーツには作業者の事故を減らすという大きなプラスの効果も確認されています。
フォードの自動車工場の例
米国を代表する自動車メーカーであるフォード・モーターでは、自社の北米2箇所の自動車工場の組立ラインでパワーアシストスーツを使用しています。
その結果、作業者の事故率が実に83%減少したと同社公式ウェブサイトで発表しています。
Since 2005, incidents in Ford’s North America facilities that resulted in time away from the job fell 83 percent; the 2016 incident rate was the lowest on record
Ford MEDIA CENTER
腕を頭の上まで上げて作業する工程では、作業者は毎日4600回も腕を上げてネジの締め付けなどの作業を繰り返し行う必要があり、大きな疲労を伴います。
上向き作業をアシストするパワーアシストスーツを着用することでそうした疲労を大きく軽減することで、事故率の大幅な低減が実現したとフォード・モーターが表明しています。

介護・医療や農業の現場でも
まだ実践的なデータに乏しい段階ですが、介護・医療や農業の現場においてもパワーアシストスーツは事故率の低減に貢献することが期待されています。
いずれの業種でも被介助者や荷物など、腰や体に負担の掛かる作業を毎日繰り返す必要がある場合があり、ぎっくり腰や慢性的な腰痛を抱える従事者は少なくありません。
パワーアシストスーツを着用することで腰に掛かる負担が大幅に軽減されるため、腰や体を痛めてしまう「事故」を減少させる効果が期待できます。
また、そうした重労働の負担が軽減されることで、勤務全体の疲労が軽減され、ミスによる事故の減少も期待できるでしょう。